後遺障害診断書の正しい書き方
半年間の通院後に症状固定になったとします。
その際に後遺障害診断書というものを医者に書いてもらうことになるのですが、これはあなたが後遺障害に認定されるかどうかを大きく左右する重要な書類です。
書き方には大事なポイントがいくつかあり、もしも誤った書き方をしてしまうと実際には後遺障害が残っているにもかかわらず後遺障害に認定されないという、とんでもない結果が待っています。
しかし何と医者はその正しい書き方を知らないことがほとんどです。
さらに悪いことに書き直しを求めてもほとんどの医者は「それは無理です」と断ってきます。
そのため、後遺障害の認定を申請しても認められない事例が多発しており、被害者からしてみれば本当にいい迷惑です。これを防ぐためにはあなた自身が後遺障害診断書の書き方を医者に教える必要があります。
以下は後遺障害診断書の実際の用紙です。
大事なポイントは次の通りです。
- 症状に一貫性・連続性が見られる
- 1ヶ月に20日以上の通院(治療)がある
- 神経学的な検査の結果が記載されている
- 「①精神・神経の障害 他覚症状および検査結果」の欄に症状が残存している旨と、その理由を神経学的に説明できている
- 「障害内容の増悪・緩解の見通し」の欄において、「今後症状が改善する見込みは低い」といった旨が記載されている
それぞれ解説していきます。
症状の一貫性・連続性とは?
症状の一貫性・連続性とは、ころころと症状が変わったりしておらず当初から整合性があるかということです。
最初の月は首が痛い、次の月は頭が痛い、その次の月は足が痛い・・・では詐病としてしか見られません。
最初の月は首・頭・足が痛い。その次の月は首・頭は痛いが足は治った。その次の月は頭痛だけが残り、半年経過後も治らない。これは一貫性・連続性ともにあると判断されるわけです。
1ヶ月に20日以上の通院がある
これはそのままの意味で、通院日数は一ヶ月に何日間が理想なのか?にて解説しています。
神経学的な検査の結果とは?
神経学的な検査の結果とは、初診時に神経学的検査をうけるの「神経学的検査の種類」を見ればわかると思いますが、これらの検査の結果がきちんと記されているかどうかということです。
なお、これ以外にも筋電図検査や神経幹伝導性検査など他にもいくつか検査の種類があります。
「①精神・神経の障害 他覚症状および検査結果」の欄の書き方
神経学的な検査の結果と、何故その症状が出ているのか、どこが悪いからその症状が出ているのかを書いてもらいます。
「何故その症状が起きているのか、原因は何なのか」をしっかりと説明できているかどうかがポイントです。
ここが一番難しいところです。これができていないと、後遺障害診断書を自賠責保険会社に送付しても、後遺障害が認められません。
誰が見てもハッキリとわかるようなことなら簡単なのです。例えば腕が無くなってしまった、歯が折れた等。
しかし、むちうちの症状に悩まされているような人は神経学的な根拠を医師がしっかり説明できていないと、なかなか認定されません。
むちうちの場合、大抵は頸椎の神経部分に何らかの損傷があって症状が出ています。なかでも特に多いのが第五頸椎・第六頸椎の損傷です。
もしあなたが右腕がしびれているとします。その場合は医者に「右腕のしびれは第五頸椎、または第六頸椎の損傷により発生していると考えられる」等と記載してもらいましょう。
もちろん症状が違う原因から来ているのであれば、その原因に置き換えて下さい。とにかく症状の原因が何か、ということを記載してもらうのです。
むちうちはどんな名医でもすぐに原因が「これだ!」とわかるものではありません。
むしろ何が原因か分からないことがほとんどです。
しかしそれでも書いてもらわなければなりません。そうしないと後遺障害に認定され難くなってしまうからです。
この場合ですと、「先生。何故、右腕が痺れているのかを具体的に説明して下さい」とあなたが医者に言わなければなりません。
きっと医者は「そうは言っても原因がよくわからない」と逃げようとします。
そう言われたなら「これまでの治療は何だったのですか?」と聞き返します。
どこそこの神経が損傷していて、その神経の損傷を治す為にはこの治療が有効であると判断したから、これまでその治療を続けていたのではないのですか?と聞き返すのです。
「原因がわかってもいないのに適当に治療していたのですか?」と言えば、
「いや、原因は~○○~の可能性があるから、その治療をしていたんです」
または「むちうちの場合は○○が原因のことが多いので・・・」等と言ってきます。
そこですかさず、「ではそれを書いて下さい!」とたたみかけましょう。
「何かしら根拠があったから、これだけ長い間治療をしてきたわけですよね?じゃあそれを書いて下さい」と。
その○○が原因である可能性が高いと考えられる、というその言葉を書いて下さいとお願いしましょう。
(例:頸椎の神経に損傷があるためだと考えられる等)
こうすることで後遺障害に認定されやすくなります。大事なことですので、しっかりとお願いして下さい。
気の弱い人にはそんなことをお医者様に言うだなんて・・・と難しく感じられるかも知れませんが、それができるかどうかが受け取れる賠償金に大きな差をつけてしまいます。
「障害内容の増悪・緩解の見通し」の欄の書き方
「今後は改善する見込みはない」、もしくは「今後改善する可能性は低い」といった旨のことを記載してもらって下さい。
本来、症状固定というものは「もうこれ以上治療しても治る可能性は非常に低い」ために行うものなので、なぜこのような欄が存在しているのか疑問ではあるのですが、それでも不思議とこの欄は重要視されています。
もし医者が拒もうとしたり渋ったりしたら、
「もう治らないと判断したから症状固定にしたんですよね?それとも実はまだ治る可能性があると思っていながら、症状固定にしようとしているんですか?」
と言ってみて下さい。ちゃんと書いてもらえるはずです。
後遺障害診断書は基本的に書き直しが出来ない
医者に正しい書き方を教えるのに一番手っ取り早いのは、自分の目の前で書いてもらうようお願いすることです。
大抵の医師は時間が無いことを理由にそれを拒否しようとしますが、「空いている時間まで待ちますから!」と言えば折れてくれるかも知れません。
もしそれが無理なようであれば一旦医者に全てを任せておいて、書いてもらったあとですぐさま内容のチェック。
修正して欲しいところが見つかったら、すぐに病院の受付で後遺障害診断書の修正をしたい旨を伝えます。
すると大抵は受付のお姉さんに「後遺障害診断書の書き直しはできません」と言われて断られます。
そこでこう言って下さい。
「事実と異なる内容が記載されているんです。このままだと問題がありますので。」
そうすれば医者と直接話すことができる可能性が高まります。
どこが間違っているんですか?とか聞かれても、先生に直接お話しますと言えば何とかなると思います。
一旦、医者と直接話すことができればその機会を逃さないよう、徹底的に書き直しをさせて下さい。問い詰める勢いでやって下さい。
この多少強引な書き直しにより、受け取れる賠償金の金額が数百万円変わってくることもザラにあります。
医者は相当嫌がるかも知れませんが、あなたにとっては死活問題です。この行動ができるかどうかで結果は大きく違ってきます。
残念ながら何らかの事情で書き直しができなかった場合でかつ適当に記載された後遺障害診断書であった場合は、わざわざ違う病院に行って新たに後遺障害診断書を書いてもらうことになります。
しかし別の病院だと最初から診察をしていたわけではないため、よくわからないということを理由に後遺障害診断書を書いてもらい難いという問題があります。
つまり別な病院でも同じように適当に書かれるか、もしくは後遺障害診断書を書いてもらうこと自体を断られるかも知れないわけです。
絶対にそうはなりたくないので上記のようにしつこく言ったわけです。
気の弱い人は特に大変だとは思いますが、これは交通事故業界における数多い試練の内の一つ。頑張って下さい。